Game-Based Situation Prototyping:GBSP

  

GBSPとは?

Game-Based Situation Prototyping(ゲームに基づく状況のプロトタイピング)は,私達が提案している対話型の協働モデリング手法です.「一緒にゲームをつくる」というプロセスを通して,非専門家を含むメンバーと協力しながら,効果的なエージェントベースモデリングを実現することができます.また,モデリングに限らず,会議,問題共有,課題抽出など,様々な議論や対話の場面でも活用することができます.

GBSPの提案は,ゲームとエージェントベースモデルが多くの側面で類似しているという点に着想を得ています.下の表に示すように,両者はよく類似しており,ゲームをつくるということとエージェントベースモデルを構築するということは,本質的に同じことであると言えます.

ゲーム エージェントベースモデル
ルールにしたがって意思決定するプレイヤ 自律的な意思決定主体であるエージェント
プレイヤ間に相互作用 エージェント間に相互作用
プレイヤとゲームシステムの間に相互作用 エージェントと環境との間に相互作用
相互作用によってスコアやリソースが変化 相互作用によって各種パラメータが変化

GBSPのコンセプト,位置づけ,実践例等については次のスライドをご覧下さい.


三浦政司, 前波晴彦, 「Game-Based Situation Prototypingによる協働型モデリングの提案」, 計測自動制御学会社会システム部会第12回研究会, pp.40-43, 2017

GBSPの使い所

GBSPはもともと,協働によるエージェントベースモデリングのための手法として提案したものですが,エージェントベースモデリングに限らず,対話や合意形成など様々な場面で活用することができます.「ゲームのプロトタイプ」として着目する状況やそのダイナミクスを机上に表現することで,次のような効果が期待できます.

GBSPの効果
  • ゲームという誰もが知っているものをアウトプットとするため,「モデリング」などの概念を意識することなく,非専門家や初学者でも取り組むことができます.
  • 着目している現象や状況について,その振る舞いを参加者が確認しながら机上に可視化できるので,議論や対話における認識の齟齬をなくし,スムーズな合意形成が可能となります.
  • ルールやトークンの動きとして「時間変化」や「場合分け」を含む状況をそのまま可視化し,共有することができます.図や絵などの静的な手段では,そのような表現は難しくなってしまいます.
  • 議論や対話の途中や最後に「テストプレイ」として試しにトークンを動かしながらゲームを動かしてみることで,その時点での議論結果を確認することができ,場合分けの漏れや認識の齟齬に気づくことができます.
  • アウトプットであるゲームをテストプレイしながら説明することで,時,場所,参加メンバーが変わった場合でも,以前の議論結果をスムーズに共有することができ,認識を一致させた状態で議論を再開することができます.
  • アウトプットであるゲームがあれば,それに沿ったシミュレーションを容易に構築することができます.ゲームのルールはほぼそのままアルゴリズムとして記述することができます.

上記のような効果が求められる場合に,GBSPは威力を発揮します.例えば,次に示すような場面が挙げられます.

GBSPが活用できる場面
  • 異分野の専門家,実務家,非専門家などを含む多様な参加者のもとに,参加者の知見を活かしつつ,エージェントベースモデリングを行いたい場合.
  • 多様な立場と視点を持ったステークホルダが集まり,問題抽出や問題解決について議論する場合.
  • 問題意識や目的意識がシャープでない段階で議論や対話をはじめる場合.
  • 議論や対話に慣れていない人や,着目する現象・状況について知見を持たない人が議論に参加する場合.
  • 初学者が社会モデリングやエージェントベースモデリングについて学ぶ場合.

GBSPの実践方法

準備

GBSPには,トークン,ブランクカード,ホワイトボードなどのプロトタイピングツールを使用します.これらは,ゲームデザインにおける「ペーパープロトタイピング」に用いる一般的な材料であり,ボードゲームの専門店や一般的なECサイトなどで購入することができます.GBSPを実践するにあたって準備するべき物品とその入手方法については,次のページにまとめました.

GBSPに用いる物品

手順

GBSPの基本的な手順は下記の通りです.詳しくは事項の「GBSPチュートリアル」のスライドをご覧ください.

  • STEP.1
    環境,エージェントの配置
    着目する現象の舞台となる環境と,登場するエージェントをホワイトボードシート,ポーントークン,チップトークンなどをつかって机上に配置します.

  • STEP.2
    パラメータの可視化
    エージェントや環境が持つパラメータを,チップトークンやブロックトークンなどを使って配置し,相互作用やパラメータ変化移動についてカード等を用いて記述します.

  • STEP.3
    ルールの構築
    ボードゲームを想定して,行動や処理の順序,意思決定が必要な箇所とタイミングなどを確認し,ルール化・手順化します.
  • STEP.4
    テストプレイ
    組み立てたルールと手順に従って簡易的なゲームプレイ(テストプレイ)を行い,細部を確認・修正します.

MEMO
上記のSTEPはあくまでも基本的で大まかな手順を示したものであり,実際のGBSPは試行錯誤的,反復的な流れで進んでいきます.必ずしもSTEP1,STEP2, …の順に進んで終わりというわけではなく,進んだり戻ったりを繰り返します.詳しくは事項の「GBSPチュートリアル」をご覧下さい.

チュートリアル

GBSPの手順,注意点,テクニック,練習用サンプルについてまとめました.


GBSPの様子

教育における活用

これまでに,複雑系科学やエージェントベースモデリングをテーマとした教養教育においてGBSPを活用しています.その詳細と成果については,次の公開論文を御覧ください.

教養教育授業におけるGBSPの様子

協力・助成

共同研究

GBSPの構築と実践にあたっては,共同研究者である鳥取大学地域価値創造研究教育機構の前波晴彦准教授より大きなご協力を得ています.ここに記して謝意を表します.

有効性評価へのご協力

GBSPの有効性評価については,早稲田大学創造理工学部経営システム工学科の高橋真吾先生の研究室と共同で取り組んでいます.高橋研究室から多大なご協力を頂いていることをここに記し,謝意を表します.

研究助成

GBSPに関する研究の一部は,中山隼雄科学技術文化財団および株式会社リバネスの研究助成を受けています.ここに記して謝意を表します.

成果発表

GBSPの提案や,GBSPを活用して進めた研究,GBSPの有効性評価などについて,これまでに多数の発表を行っています.

  1. 栗山誠太朗,高橋真吾,三浦政司,前波晴彦, 「Game-Based Situation Prototypingによる状況共有の量的および質的な有効性評価」, 計測自動制御学会社会システム部会第15回研究会, pp.117-124, 2018
  2. 三浦政司, 前波晴彦, 「Game-Based Situation Prototypingによる協働型モデリングの提案」, 計測自動制御学会社会システム部会第12回研究会, pp.40-43, 2017(優秀論文賞, 優秀発表賞)
  3. 三浦政司, 櫻間一徳, 「マルチエージェントシミュレーションをはじめてみよう」, システム/制御/情報, vol.61, No.5, pp.169-174, 2017
  4. M. Miura, H. Maenami, “Game-Based Situation Prototyping for Social Modeling and Simulation,” AAAS 2017 Annual Meeting, General poster session, 2017
  5. 三浦政司, 前波晴彦, 「ゲーム設計とシステム設計の手法を応用した,エージェントベースモデリングのための対話プロセスの提案」, 第10回計測自動制御学会社会システム部会研究会論文集, pp.211-pp.214, 2016
  6. 三浦政司, 「教養教育としての複雑系科学入門授業:初学者によるMAS構築の実践」, オペレーションズ・リサーチ, vol.62, No.8, pp.464-469, 2017
  7. 三浦政司, 前波晴彦, 「“Game-Based Situation Prototyping” を用いた複雑系科学入門授業」, 日本科学教育学会研究会研究報告, Vol.31, No.2, pp.17-20, 2016
  8. M. Miura and H. Shiroishi, “Agent-Based Modeling and Simulation for Two-Dimensional Spatial Competition,” Agent and Multi-agent Systems: Technology and Applications, Smart Innovation Systems and Technologies Book Series, Springer, 2018 (accepted)
  9. M. Miura, S. Kiriyama, “Agent-Based Modeling and Simulation of Problem-Solving with Collective Intelligence”, AAAS 2018 Annual Meeting, GEN SS-10, 2018
  10. 白石秀壽, 三浦政司, 「マルチエージェントシミュレーションを用いたホテリングモデル拡張の試行」, 経営情報学会全国研究発表大会要旨集, 2017年秋季全国研究発表大会, pp.309-312, 2017
  11. 白石秀壽, 三浦政司, 「空間的競争モデルの展望-マルチエージェントシミュレーションの可能性-」, 鳥取大学地域学論集, 第14巻, 第1号, pp.109-121, 2017
  12. 三浦政司, 白石秀壽, 「マルチエージェントシミュレーションを用いた空間的競争の研究に関する検討」, 第7回人工知能学会ビジネス・インフォマティクス研究会, Paper No.5, 2017
  13. 桐山聰, 矢部玲子, 三浦政司, 村田真実, 「集団的知性を活用した論理的文書作成支援方法」, 平成28年度工学教育研究講演会講演論文集, pp.316-317, 2016
  14. 前波晴彦, 三浦政司, 桑野将司, 川島浩誉, 「ABMを用いた学際研究チーム形成モデルの構築」, 第10回計測自動制御学会社会システム部会研究会論文集, pp.175-178, 2016